終末期ケア・看取りケアの資格は、ケアイノベーション協会が執筆しています。
セルフケアのあり方
あ
終末期ケアの中立的な視点を持った資格
いわゆる終末期のケアには、さまざまな主義主張を持った考え方、団体がかかわってきます。その選択肢をどのように考え、選択していくのかは個人個人の自由であり、それらを自由に選択する権利があります。それを保障することも終末期ケアの目的の一つといえるでしょう。しかし、これらの選択肢のどれか一つに軸足を置くことは、その「中立性」に問題が及ぶことになります。
例えば、特定の宗教に基づいたケアは、それ自体がどのようなものであっても、そこに軸足を置いた終末期ケアの資格は中立性に問題が生じることになります。中立性とは、あらゆる選択肢から独立し、俯瞰的に存在し続けなければならず、さらに、その中心的な原理が科学的である必要があるのです。
その意味で、終末期ケアの資格を考える際に宗教や特定の主義主張を持った思考や団体の資格については選択肢のバリエーションとして考えるべきであり、マネジメント的な視点から終末期ケアを考える際には宗教や特定の主義主張からの中立性や科学的根拠を持っていることといった要件を踏まえて選択する必要があるでしょう。
終末期ケアの資格とは
終末期ケアは、さまざまな表現が使われますが、どれも若干のニュアンスの違いがあります。例えば、ターミナルケアは終末期ケアに最も近い用語ですが、看取りケアは「看取る」ことに力点が置かれていますので、終末期ケアとはニュアンス的に違うものです。グリーフケアはこれらとは全く異なるもので、悲嘆に対するケアをいいます。このように、人の終末期から死、死後といったプロセスにどのような立場、目標をもってアプローチするかによってさまざまなケアが提案され、提供されています。
また、死という重大な人生のイベントに関わることですから、純粋に医学生理学的視点からのみで扱えるテーマではないことが特徴です。人類の多くは死をどのように扱うべきかという点から宗教を生み出してきました。死こそ宗教であるといってもいいでしょう。そのため、終末期、ターミナル期、さらに死後といったプロセスには宗教や宗教関連の思考や団体がかかわってくることが容易に想像できます。しかし、医療や福祉といった「科学的根拠」に基づいて提供されるべきケアにおいて、宗教勢力の影響力が強まるのは好ましくありません。それは伝統的宗教であっても同じです。確かに、個人の信教の自由が尊重されますので、その部分には踏み込むことはできませんが、科学的根拠に基づいた「中立的な知識」こそが重要であります。
言い換えると、宗教のみならず、さまざまな主義主張を持った市の考え方やケアのあり方があっても良いわけで、それをどのように選択するかも個人個人の自由です。しかし、それを俯瞰的にとらえ、中立的に扱える専門的な人材が必要になります。それは近代がさまざまな「自由」として認めてきた個別的な選択肢を実際に扱う術を死に関するケアにおいても実装することが必要な段階に今日の私たちは至っていることを示しています。
この中立的な知識を持った専門職が必要であり、そのための資格が大切になります。